明治大学の教授らによる「電気味覚」に関する論文が、栄養学での功績を認められ、イグ・ノーベル賞を受賞しました。電気味覚技術を生かしたデバイスも、開発が進んでいます。
イグ・ノーベル賞とは
イグ・ノーベル賞は、「人を笑わせ、考えさせる研究」に贈られる賞です。もともとは「風変わりな研究の年報」という、海外のサイエンス・ユーモア雑誌の発刊に伴い、ノーベル賞のパロディとして1991年に創設されました。
日本人による研究も2007年から、医学や栄養学、工学、生物学など幅広いジャンルから毎年選出されています。日本・イギリスは「イグ・ノーベル賞の常連国」といわれており、同賞の創設者、エイブラハムズによると「多くの国が奇人・変人を蔑視するなか、日本とイギリスは誇りにする風潮がある」と、2つの国の共通点を挙げています。
明治大学教授らによる論文が受賞
2023年、イグ・ノーベル賞の栄養学賞を受賞したのは、明治大学・宮下芳明教授による「電気味覚」の論文です。宮下教授は飲食物の味覚を変化させる装置などを開発しており、2011年に東京大学の中村裕美特任准教授と発表した論文が、今回の受賞の対象となっています。
2011年の論文「Augmented Gustation using Electricity」は、ストローやフォーク、箸(はし)に微弱な電流を流し、飲食物の味を変えるというものです。論文内では、研究結果から食体験における「味覚の拡張」へのビジョンを掲げています。
「電気味覚」搭載デバイスの開発も
宮下教授は2011年の論文発表以降も、味覚メディア技術の研究を推進しています。そして、キリンホールディングスとの共同研究で、減塩食の味を増強させる電気刺激波形も開発しました。そして、この電気刺激波形を搭載した「エレキソルト」というデバイスを、キリンホールディングスから発売する予定です。
このほか、料理の写真や音声入力により味覚を変える「TTTV」という味覚メディア技術を開発するなど、味覚に対する研究に日々研さんを重ねる宮下教授。今回のイグ・ノーベル賞受賞についても、「受賞をとても光栄に思います。(論文発表後)電気味覚技術や味覚メディア技術は、多方面にわたる発展と社会実装に至っています。そうした広がりや今後への期待が込められた受賞と捉え、今後も研究を推進していきたいです」とコメントしています。
デバイスの発売日が気になる!
「電気で味覚を変化させる」研究がさらに進めば、メタバース内で「食べる」「飲む」といった行動をしたときにも、味を感じられるようになるのではないでしょうか。技術の進歩で、より高い没入感を体験できる日が来るのが、待ち遠しいですね。
キリンホールディングスから発売されるデバイスも、減塩食に物足りなさを感じる多くの方の悩みを解決することに貢献することが期待されます。デバイスの発売日や価格など、今後の情報もチェックしていきましょう。