大日本印刷は、文化財や世界遺産の高精細な3DCGデータを、スタジオ撮影に提供することを発表しました。これにより、「神田明神」や「仁和寺『金堂』」など、古い歴史を持つ名所をバックに、よりよい写真を手軽に撮影できるようになります。
文化資源の保存・活用を行っている大日本印刷
大日本印刷では、2015年頃から文化資源の保存・活用を行っています。この活動には、フォトグラメトリという撮影データから、3Dモデルを生成する技術が採用されており、歴史的な建造物の現在の様子をリアルにデータとして保存することはもちろん、建物の構造や修繕方法などを後世に伝える貴重な資料としての役割も果たします。
インカメラVFX用途でデータを提供
発表によると、大日本印刷は自社が作成した3DCGデータを、インカメラVFX用途で提供。インカメラVFXとは、スタジオ撮影の背景に3DCGデータをLEDパネルで投影し、カメラの移動に合わせてリアルタイムで背景を描画する技術です。インカメラVFXはテレビドラマやCMなどの撮影にも活用されており、リアルな映像をスタジオで作ることができるので、制作時間の短縮にも貢献しています。
第一弾の「神田明神」は、ソニーPCL株式会社のデジタル背景ライブラリー「BACKDROP LIBRARY」で利用可能です。3DCGデータは2022年にVRアーティストの上演作品にも使用されたもので、実際の神田明神境内で奉納式も行われました。
また、11月には第二弾となる「仁和寺『金堂』」の3DCGデータが使用できるようになります。こちらは2019年に製作されたデータで、8Kの解像度の美しい映像を、ウォークスルーで納めているのが魅力です。
新サービスでの目標は…
大日本印刷によると、新サービスは「文化財の保存・活用と、映像制作における課題解決の両立」を目標としています。撮影用途で制作された新データには、独自の技術で陰影情報や凹凸情報も追加されているとのこと。また、データ加工を用いれば、アングルの変更や配置の転換、特殊効果の追加も可能です。
現実世界では、屋外での撮影は特に時間帯や天候などを気にしなければいけませんが、3DCGデータを活用したスタジオ撮影は、いつでもベストな状態で撮影ができます。3DCGデータを活用し、神田明神や仁和寺をバックにした魅力的な写真のできあがることが、期待されます。
さまざまな課題解決につながるか
建造物の劣化や、撮影が受ける天候などの影響は、避けられないものです。大日本印刷の取り組みは、こうした課題と向き合い、未来に文化財を残すこととし、撮影時の問題を解決することに。つながるのではないでしょうか。
今後もさまざまな文化財が撮影素材として提供され、活用事例も徐々に増えていくのを楽しみに待ちましょう。