2023年11月、大日本印刷はメタバースでサイバー攻撃対策の訓練ができる、新たな研修プログラムの提供を開始しました。インターネットの普及とともに増えるサイバー攻撃被害に、メタバースでの訓練はどのような効果を発揮してくれるのでしょうか。
増える、企業のサイバー攻撃被害
総務省の「令和5年版情報通信白書」によると、サイバー攻撃関連通信数は2015年から2022年までにおよそ8.3倍増加しています。単に被害数が増加するだけでなく、その手口も年々複雑で巧妙なものに進化。
また、トレンドマイクロの調査によると、2021年度の企業の被害額は1組織あたり約3億2850万円でした。経済的な損失だけでなく、事業停止や社会的信用を失うことにもなりかねないサイバー攻撃から、どのようにして企業を守るかは、重大な経営課題の1つだといえます。
メタバースで訓練できるプログラムがスタート
大日本印刷が開発した、メタバースを利用したサイバー攻撃訓練研修プログラムは、同社のサイバーナレッジアカデミーで「組織連携コース メタバース演習」として提供されます。なお、サイバーナレッジアカデミーは、サイバー攻撃対策人材を育成するための実践型プログラムで、最新のインシデント事例を取り入れた講義や演習を実施しています。
講師は大日本印刷のエンジニアが担当し、座学はもちろん、演習を通して攻撃シナリオの体験も可能です。
多様な攻撃シナリオの体験が可能
メタバースで体験できるサイバー攻撃のシナリオは、サイバーセキュリティの第一人者ともいえる、サイバーディフェンス研究所専務理事・名和利男氏の知見をもとに、過去の事案と対応を反映させています。シナリオは複数用意されており、多様な攻撃事例を体験できるのも、新たなプログラムの特徴の1つです。
体験者はメタバース内のオフィスを動き回り、情報を探すことができます。状況を把握しながら、チャットツールなどで他の体験者と情報共有や議論を繰り返し、サイバー攻撃への対応を決定していきます。
メタバースの利用は、体験者の没入感を高め、現実に近い形での訓練が可能です。また、オンラインで行う訓練には、離れた場所にいても多くの関係者が参加でき、訓練のために参加者が1つの場所に集まるという手間も省けます。
幅広い訓練にメタバースを活用しよう
災害対策や医療現場でのシミュレーションなど、メタバースはさまざまな研究やトレーニングに活用されています。昨今重大な問題として注目されるサイバー攻撃にも、メタバースでの訓練は有効なのでしょうか。
訓練による成果など、新たな情報にも注目していきましょう。