歴史的な事件をVRで再現した映像は多く存在しますが、今回ご紹介するのはラジオ音声をもとに作られたVR映画です。戦争を知らない世代の人たちにも、リアルに伝わるVR映像で、体験者は何を感じるのでしょうか。
「1943 BERLIN BLITZ」の内容や特徴を見ていきましょう。
「1943 BERLIN BLITZ」とは
「1943 BERLIN BLITZ」は2018年にアイルランドとイギリスによって制作された、およそ14分のVRアニメーションです。この作品は1943年9月に起こったベルリンの夜間空襲を題材にしています。
当時、BBCの戦場記者と録音技師は、爆撃機に乗り込み夜間空襲の恐ろしさをラジオ音声で伝えました。この音声をもとに制作されたのが、「1943 BERLIN BLITZ」です。
彼らを乗せた爆撃機は、ヨーロッパ中心部を飛行し、敵の戦闘機などの攻撃に耐えながら街に多くの爆弾を落としました。空襲の恐ろしさをリアルに伝えたラジオ音声は、当時も話題を集めたそうです。
この作品で体験者は、機内を自由に歩き回りながら、乗組員の状況や機内を観察できます。映像内の人物とのコミュニケーションはできませんが、自身の好きな視点でストーリーの展開を見守ることが可能です。
生々しい音声がベルリンの夜へいざなう
このVRアニメーションは、ラジオ音声を元にCGを制作したことで、機内の様子や街の様子を正確に再現しています。それだけでなく、当時の実際のラジオ音声を作品に使用したことで、よりリアリティが増す内容となっています。
機関銃の音、敵の飛行機が撃ち落とされる音、乗組員たちのやりとりなど、戦争の生々しい音声が、当時の緊張感と恐怖をリアルに伝えてくれます。体験者のなかには思わず手に汗握ってしまう方、緊張で鼓動が早くなってしまった方もいるようです。
空襲の後には静けさが訪れ、パイロットは安心感から歌を歌い始めます。音声だけでも当時の様子が目に浮かびますが、これを忠実にVRアニメーション化することで、空襲の夜にタイムスリップしたような感覚を味わうことができるのです。
戦争が「記録」ではなく「記憶」として残る
VRによる報道作品は、これまでも複数制作されています。実際に起こった出来事をただニュースで伝えるだけでは、第三者的な立場の人には記録としてしか残りません。しかしVR映像として残す、報道することで、体験者の「記憶」として深く脳内に刻み込まれるのです。
70年以上も昔の出来事を、ただ情報として音声で残すのではなく、多くの人が体験できるVR映像にすることで、戦争があった事実だけでなく空襲の恐怖を覚えることができます。戦争はあってはならないものですが、今も世界では争いが絶えません。
戦争を知らない世代が増えるなか、こうしたVRによる体験は、その恐ろしさを身をもって知るためのツールとして役立ち「二度と起こってはいけないこと」だと再認識することにも貢献するのではないでしょうか。
忘れてはいけない歴史をVRで体験しよう
日本、そして世界には決して忘れられてはいけない歴史が多く存在します。こうした歴史の数々をVR映像にすることで、私たちは当時へタイムスリップし、さまざまな体験を通し歴史の目撃者となることができます。
学校教育において、仮想空間で世界史や日本史をよりリアルに学ぶという時代が来る日も近いかもしれません。幅広い学習に役立つVRが、今後ますます発展を遂げ、子どもたちの未来の可能性を広げることに役立つのを、楽しみに待ちましょう。