「目のなかに入れるコンピュータ」として開発が進められているスマートコンタクトレンズの装着テストが、2022年6月に行われました。この実験ではどういった成果が得られたのでしょうか。
今回は、注目のスマートコンタクトレンズに関するニュースをお届けします。
スマートコンタクトレンズとは
スマートコンタクトレンズとは、砂粒ほどに小さなディスプレイを、実際のコンタクトレンズに埋め込み装着するものです。私たちは普段、スマートフォンやパソコンの画面を見ていますが、スマートコンタクトレンズを装着すると視界に多くの情報が表示されるようになります。
この「スマートコンタクトレンズ」の開発を行っているのは、アメリカのMojo Visionという企業です。AppleやAmazon、Googleなど有名企業出身のエンジニアを中心に創業された同社では、2015年より開発が進められています。ちなみに、2020年12月には、日本のコンタクトレンズメーカーとして有名な株式会社メニコンと、共同開発契約を結びました。
装着テストの様子は
開発開始から7年の年月を経た2022年6月、ついに装着テストが実施されました。装着テストに使用されたのは、同年3月末に公開した最新の「Mojo Lens」というものです。
1インチあたり14000ピクセルの解像度を持つマイクロLEDディスプレイを搭載しており、さまざまなセンサーを使用したアイトラッキングを実現。手を使わず、視線のみで操作ができるのも魅力です。
「Mojo Lens」開発における技術的な難点は、電力供給や通信でした。目に入れるタイプのスマートコンタクトレンズは、これらをすべてワイヤレスで行う必要があり、そこが高いハードルだったとのこと。医療グレードのマイクロバッテリーを採用する、独自の電力管理システムを導入するなどして、この課題をクリアしたスマートコンタクトレンズは、さまざまなリスク軽減を重ね、実際に目に装着するというテスト段階に至りました。
装着したのはCEOのDrew Perkins氏で、同氏は非常に刺激的な体験をしたそうです。実験では自身が向いている方向を特定し、画像や文章を見ることなどができました。体験を終えた感想として「未来を覗(のぞ)く体験は、文字通り言葉を失うものだった」と、綴(つづ)られています。
市販化されるためには…
スマートコンタクトレンズ、初の装着テストは「成功」だったといえるでしょう。今後、開発された商品が実際に市販化されるためには、より多くのテストを重ねることも必要です。そして、最終的には「アメリカ食品医薬品局(FDA)」への申請を行い、許可が下りれば一般の方も購入ができるようになります。
スマートコンタクトレンズは、視覚障害を持つ方の補助はもちろん、アスリートのトレーニングサポートなど、幅広い用途で活用されることを目的に、開発が進められています。最終的には1日じゅう目の中に入れ、現実世界と併用できるようなアシスタント的要素を持った製品の開発も視野に入れているそうです。
一般への流通に期待!
このたび、初の装着テストを終えたスマートコンタクトレンズですが、まだまだ市販化には多くの課題が残されているようです。それをクリアし、アメリカでの市販化が実現しても、日本への上陸は当分先でしょう。
しかし、「目に入れるコンピュータ」は確実に、私たちの生活のなかへ入り込むための準備が進められています。一般への流通が何年先になるかは予想がつきませんが、その日が来るのを楽しみに待ちたいですね。
VRとはまた異なる新感覚の体験を、より多くの方ができる日が来ることを期待しましょう。