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1人の少女の自立を描いたVR作品とは

VRペイントアプリ「Quill」を使用した本格的なVRアニメーションが、第77回ヴェネツィア国際映画祭で話題となりました。VR映像のクオリティはもちろん、メッセージ性も高い物語の魅力は、どこにあるのでしょうか。

今回は、「Goodbye Mister Octopus」についてご紹介します。

「Goodbye Mister Octopus」とは

「Goodbye Mister Octopus」は、2020年にフランスとアメリカで制作されたVRアニメーションです。冒頭でご紹介した通り、第77回ヴェネツィア国際映画祭ではVR部門「VENICE VR EXPANDED」にノミネートされました。

作品の主人公となるのは、ステラという10代の少女。サッカー選手でもあるステラは父親と2人暮らしで、母親は仕事のためほとんど家にはいません。ステラは16歳の誕生日に、オーストラリアで行われる試合への参加を希望しますが、父親はそれを拒否します。

そこには、娘を思う父の気持ちが隠されていますが、ステラにはそれがわかりません。2人の関係が崩れそうになったとき、仕事で忙しい母から手紙が届き、ステラはある決心をします。

1人の少女が大人の階段を登り、精神的に成長するおよそ8分の物語は、これまでお絵描きのツールとして親しまれてきた「Quill」で描かれたとは思えないくらい、深いテーマが隠されているのです。

アニメーション表現の魅力

VRは360度見渡せる映像も魅力の1つですが、VR表現として360度すべてを有益な映像で埋めることだけが優れた手法ではない、ということは多くの方が認識していることでしょう。しかし、「Goodbye Mister Octopus」ではVRを360度自由に描けるキャンパスとして捉えており、自由度の高い空間の活用がいかに楽しいものなのかを教えてくれます。

登場人物は360度の空間を自由に歩き回りますが、視線誘導なども考えられている構成のため、場面転換などがあってもストーリーにすんなりと没入可能です。VRならではの楽しみ方が存分にできるのも、この作品のよさだといえます。

作品の見どころ

ストーリー最大の見どころは、小さな部屋から大きな世界へと羽ばたいていく少女の成長です。冒頭では、小さな部屋のスケール感と少女の大きさに驚くかもしれませんが、これは少女の閉鎖された世界を髣髴{ほうふつ)させます。

母親から手紙を受け取ってから世界は大きく広がり、少女の表現も豊かになり、精神的な成長が感じられるでしょう。この小さな部屋から飛び出そうとする少女と、まだまだ娘を自身の手元に置いておきたいと願う父。

親子の衝突や各々の葛藤は、子を持つ親にとっては少し胸が苦しくなるような内容かもしれません。それでもステラは大好きだった「Mister Octopus」と別れを告げ、旅立っていきます。

父親がそれを認めなければいけないというラストシーンからは、得るものが多いのではないでしょうか。

「家族」をテーマにしたVR作品を見てみよう

従来の映画やアニメ、ドキュメンタリーなどと同様、VRにもさまざまなメッセージが込められている作品が多くあります。今回ご紹介したような「家族」をテーマにした作品からは、私たちが大切にしなければいけないことを学んだり、考えたりする機会を与えられます。

ジャンルも豊富なVR作品の数々のなかから、ぜひ「家族」をテーマにしたものをピックアップして、お子さまなどと一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。

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