2021年2月、国内で初めて実施された国際映画祭でグランプリ受賞作品として選ばれた1つ、「Replacements 諸行無常」。映画監督として有名な園子温氏も「VRの可能性を感じさせてくれた」と語る作品には、どういった魅力が隠されているのでしょうか。
今回は、「Replacements 諸行無常」についてご紹介します。
「Replacements 諸行無常」とは
「Replacements 諸行無常」は、日本とインドネシア、ドイツが共同で2020年に制作したVRアニメーションです。およそ12分間の映像は、インドネシア・ジャカルタのなかでの移り変わりを描いています。
この作品は、2009年制作の短編アニメーション「TimeLapse」をVR映画作品用にリメイクしたものです。原作である「TimeLapse」では、監督の祖母が住んでいたジャカルタの記憶をもとに、変化する町並みが描かれていました。
今回の作品では、政治や宗教の移り変わりが新たに描かれており、風景や人、文化などが変化するなかで何が失われ、反対に何が新たに根付くのかを描写しています。
緻密なイラストが動き出す魅力
この作品を手がけたJonathan Hagard監督は、イラストレーター、そしてアニメーターでもある人物です。緻(ち)密なイラストやアニメーションは、浮世絵のようだと高い評価を受けています。
そんなイラストがVRアニメーションとして動く様子は非常に魅力的です。360度、さまざまな場所で起こる物語を巡りながらも、架空のジャカルタの街の雰囲気を堪能できるような設計となっています。架空のジャカルタですから、実際にある場所ではないものもありますが、ジャカルタに行ったら同じ景色が見られるのでは、と思えるほどです。
VRだからこそ伝えられるメッセージ
「Replacements 諸行無常」は、大きな変化のなかでなくなるもの、そして新たに生まれるものを伝える作品です。非常に難しいテーマですので、表現に苦しむ部分も大きいでしょうが、監督はVRを活用することで、このメッセージをうまくアニメーションのなかに埋め込みました。
VRにしかできない展開や演出、そして私たちの心に響く内容だったからこそ、園子温監督からも「VRの可能性を一番感じさせてくれた作品で、何度でも見られる」という評価を受けたのではないでしょうか。
「Replacements 諸行無常」は、2021年3月の第24回文化庁メディア芸術祭でも、エンタメ部門優秀賞を受賞しています。魅力的な作品の世界を、ぜひ多くの方にリアルに体験していただきたいです。
バーチャルの世界でリアルな空間へ
今回ご紹介した作品の舞台は架空のジャカルタ。実際にはない場所も描かれています。しかし、メタバースにはリアルに再現された渋谷や大阪なども存在し、仮想空間内で町並みを楽しんだり、買い物をしたりとさまざまな体験が可能です。
実際に訪れたことのない場所、なかなか足を運べない思い出の場所に、VRで降り立つのも、よいかもしれませんね。