独特のタッチがなんともいえない心情を呼び起こす美術作品、ムンクの「叫び」。日本でも有名な絵画の1つですが、この「叫び」の世界観を再現したVRコンテンツが、登場当初、注目されました。
今回は、「The SCREAM VR -ムンクの叫びVR」の魅力をご紹介します。
「The SCREAM VR -ムンクの叫びVR」とは
「The SCREAM VR -ムンクの叫びVR」は、2018年にフランスで制作されたVR映像です。およそ15分間のVR動画は、ムンクの「叫び」誕生の背景に迫る内容となっています。
全体的にゆがんだ世界のなかで、なんともいえない表情で叫ぶ1人の人間。ムンクが描いた「叫び」は、なぜ叫んでいるのか、どういった叫びなのかなど、多くの人の想像力をかき立てるような作品でもあります。
そんな「叫び」を、作者であるムンクの心の奥深くから読み取るのが、「The SCREAM VR -ムンクの叫びVR」です。作品は3つの章からなっており、特徴的なそれぞれのシーンを通し、ムンクの「叫び」を体験する、という内容となっています。
作品の世界観を体験できる新感覚のVR
作品は誰も居ない真っ白な美術館からはじまります。体験者の前には「叫び」の絵が飾られており、その絵画としばらく対峙(たいじ)することとなります。終わりの内容に思えるような長い静寂のなか、あのなんともいえない「叫び」と向き合っているのは、恐怖すら感じる時間です。
体験者が絵画に触れると、「叫び」の世界へと引きずり込まれます。燃えるような空の下にある火山、黒い蜘蛛の糸だらけの世界、恐ろしい亡霊が飛び回るシーンなど、現実にはないさまざまな奇妙な場面を体験するうちに、無意識のうちに「叫び」の世界に没入していきます。
監督独自の視点にも注目
美術系のVRというと、作品の背景について「学ぶ」ことがコンセプトとされているケースが多い傾向です。しかし、この「The SCREAM VR -ムンクの叫びVR」は、「叫び」を描いた当初の作者、ムンクの状況や作品を製作した背景、心情を考察し、監督独自の視点で制作された新たなコンテンツだといえるでしょう。
日本では、既存のアートをVRで新たな方法で表現するといったものはあまり見かけません。しかし、海外ではこうした挑戦が多くなされており、VRを通して作品の魅力を再認識するとともに、新たな解釈に辿(たど)り着くことができます。
ムンクの「叫び」についても、VRを制作した監督による解釈や世界観を通し、新たなメッセージをくみ取ることができるかもしれません。
新感覚でアートの世界を楽しもう
「VR美術館」と称されるコンテンツは、実際の美術館とそこに展示されている作品を、バーチャル空間内で自分のペースで楽しめるものが多いです。しかし、今回ご紹介したVR作品のように、美術作品を新たな視点で見ることができるコンテンツも少なくありません。
新感覚でアートの側面や背景を知ることができる魅力的なコンテンツを通し、これまでにない体験や考えを生み出せるとよいですね。アニメーションやドキュメンタリーにはない世界観を、ぜひお楽しみください。