ヴェネツィア国際映画祭をはじめ、さまざまな映画祭で注目を集めた「We Live Here」。公園で1人暮らしを続ける女性を追ったドキュメンタリーからは、どういったメッセージを受け取ることができるのでしょうか。
今回は、「We Live Here」の魅力をお伝えします。
「We Live Here」とは
「We Live Here」は2020年にアメリカで制作された、ドキュメンタリーVRです。およそ12分間の映像となっており、ロサンゼルスの公園で1人暮らしをする女性に焦点を当てています。
3年近く公園にテントを立てて生活をする59歳の女性、ロッキーは、ある日公園から追い出されてしまいます。体験者はテントのなかでロッキーの生活を知り、住居を奪われるロッキーを間近で見ることになるのです。
さまざまな技術を使った演出が魅力
映像のベースは360度のリアルな映像ですが、シーンによってはアニメーション、フォトフラメトリーなどを使用し、効果的にロッキーの物語をサポートします。こうしたさまざまな技術を駆使することで、ロッキーの人生をスムーズに追い、物語に没入することが可能です。
360度映像では体験者の周辺で起こる出来事を傍観することしかできませんが、フォトグラメトリーに切り替わると、テント内を自由に散策したり、ものに触れたりできるようになります。ラジオやオルゴール、日記など部屋のなかにあるアイテムに触れると、ロッキーの過去が語られる仕組みで、母親との記憶や学生時代の思い出、結婚していた頃の話などを聞くことが可能です。
こうした演出は、より「自分事」として、ロッキーという女性の人生の物語に入り込むことをサポートしてくれるでしょう。
現在進行形の物語から得られるものは
至って「普通」の暮らしを送っていたロッキーが、なぜ公園でテント暮らしをすることになったのか。そしてその家すらも追い出されることになってしまうのか、VRを通すと、ロッキーの物語は「知らない誰かの物語」ではなく、「自分にも起こり得る可能性のあるシチュエーション」として身にしみます。
「We Live Here」はフィクションでも、過去の出来事でもなく、現在進行形でつづられているロッキーの人生の一片です。体験者はVRの視聴後、どう生きるべきかを深く考えさせられるのではないでしょうか。
知らない世界で起こっている出来事を体験しよう
今回ご紹介した「We Live Here」は、実際にアメリカに住む女性のお話です。世界のどこかでは、私たちの想像もつかないような生活を送っている方が多くいます。さまざまな境遇の方々の人生を、VRを通して知ることで、人生観や視野が大きく広がると考えられます。
VRは非現実的な魅力的な体験をするだけのツールではありません。VRを活用し、知らない世界で起こっている出来事に目を向けられる人が、1人でも増えることを願っています。