歴史的建造物がリアルに再現されることも多いバーチャル空間に、また新たなワールドが登場しました。東京・上野にあった「旧博物館動物園駅」が、リアルに蘇った空間には、どういった魅力が隠されているのでしょうか。
今回は、「デジタル ハクドウ駅」に関する情報をお届けします。
2004年に廃止された「旧博物館動物駅」
旧博物館動物園駅は、京成上野線にかつて存在した駅です。日暮里駅と上野公園駅(現在の京成上野駅)の中間に位置する駅として、1933年12月に開業しました。
上野公園周辺は、公園内の樹木を損傷してはいけない、公園地上部走行不可など厳しい条件がありました。旧博物館動物園駅のある場所は、皇室で代々引き継がれてきた「世伝御料地」という特別な場所です。駅舎の建設には、天皇陛下の勅許を得る必要があるなど、建設前から心配も多くあったものの、1932年3月に、無事に勅許を得られました。
こうして完成した旧博物館動物園駅は、現在の東京国立博物館、上野恩賜動物園の最寄り駅として利用されました。戦争も乗り越え長年営業していましたが、ホームが短く4両編成の列車しか停車できないなどの問題もあり、利用者が減少。1997年に営業を休止し、2004年に廃止となりました。
廃止後も駅舎、ホームなどは営業当時の姿を残しており、2018年には特に景観上重要な歴史的価値をもつ建造物「東京都選定歴史的建造物」に選定。これは、鉄道施設としては初めての快挙となります。
フォトグラメトリ化で蘇った、「デジタル ハクドウ駅」
駅としての機能は停止したものの、現在も文化的に活用され続けている旧博物館動物園駅。素晴らしい文化的な遺産をより多くの方に楽しんでもらえるよう、バーチャル空間に「デジタル ハクドウ駅」が登場しました。
「デジタル ハクドウ駅」は東京藝術大学が進める「デジタル上野の杜(もり)」と「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」の連携プロジェクトの一環として、京成電鉄協力のもと制作。フォトグラメトリ化で、細部にわたって再現されている「デジタル ハクドウ駅」は、VRChatやclusterで楽しむことができます。
「デジタル ハクドウ駅」の見どころは
「デジタル ハクドウ駅」は、建物の外観はもちろん、地下も含む内部も再現されています。扉を抜けると地下に続く階段が現れ、レトロな雰囲気にワクワクした気分を味わえます。むき出しのコンクリートや壁に残された張り紙に、当時の空気感や廃墟と化した空間を肌で感じることができるでしょう。
また、奥の階段を進めば、リアルには立ち入れない改札口にも行くことができます。2018年に一般公開された際に展示されたアナウサギの大きなオブジェも、改札の近くでしっかりと存在感をあらわにしています。
隅々まで目が離せない「デジタル ハクドウ駅」ですが、やはり最大の見どころは、立ち入れない改札やプラットフォームではないでしょうか。木製の改札ラッチ、コンクリートむき出しの空間、壁に描かれたペンギンなど、当時の様子を忠実に再現したバーチャル空間で、ぜひタイムスリップを楽しんでください。
懐かしの風景をリアルに見に行こう
「デジタル ハクドウ駅」のように、昔から残る空間はもちろん、現存しない歴史ある建物を楽しめるバーチャル空間は多く存在します。360度リアルな風景を楽しめるバーチャル空間で、懐かしの風景をより深く堪能してはいかがでしょうか。
自宅など好きな場所でタイムスリップや旅行、鑑賞を楽しめるメタバースを、今後も活用していきましょう。