全国には、過疎化が深刻視される地域が多く存在します。中越地震で被災した新潟にある山古志地区も、そんな地域の1つです。山古志地区はメタバースに村を再現するという取り組みにより、大きな効果を実感しています。
一体、どのような効果があったのかを、見ていきましょう。
中越地震で被災した旧山古志村
新潟県長岡市山古志地区は、2005年に長岡市に編入合併されるまでは「山古志村」という1つの村でした。1956年、昭和の大合併により生まれた山古志村は、村おこしの実施やNHK連続テレビ小説「こころ」の舞台になるなど注目を浴びることもありましたが、2001年に合併案が提示され、その後合併が成立しました。
合併直前の2004年10月には、村全体が県中越地震で甚大な被害を受け、地震に伴う土砂災害により、地震発生前とは大きく異なる風景に。また、村に通じる道路が寸断されたことから孤立してしまい、全村民に避難指示が出るといった事態も起こりました。
避難指示が解除されたあとも、生活拠点を移した元村民の多くが山古志地区に戻らなかったことから、深刻な高齢化などが問題となっています。
メタバースに村を再現
美しい棚田や、澄み切った空気が印象的な旧山古志村ですが、前述の通り過疎化や高齢化は深刻です。そこで、メタバースプラットフォームclusterに村を再現し、山古志村を知って、興味を持ってもらうという取り組みが進んでいます。
メタバース上の旧山古志村は棚田や豊かな自然が広がり、緑が美しいワールドとなっています。風に揺らめく水面、やさしい風の音や虫の鳴き声なども感じることができ、空にニシキゴイが泳ぐといった、バーチャル空間ならではの演出も魅力的です。
「デジタル村民」がリアル人口を上回る
「山古志に住んでいない人にも地域を応援してほしい」そんな思いで始まった旧山古志村のメタバースでは、2021年12月よりデジタル住民票の販売も実施。デジタル住民票は、販売開始から10か月で、リアルな人口を上回る1000人以上にもなりました。
そして、この取り組みはただデジタル住民票を購入するだけでなく、リアルな旧山古志村にデジタル村民が足を運ぶ機会の創出にもつながっています。仮想空間で知り合った方たちが旧山古志村を訪れ、お土産を渡し合ったり地域の方と交流をするアクションは、「観光」ではなく「帰省」と呼ばれているようです。
メタバースは山古志の活性化に貢献中!
デジタル住民票の販売、デジタル村民のリアルな「帰省」など、さまざまな効果をもたらしている、旧山古志村のメタバース。美しい風景を再現したワールドのように、震災から時を経たリアルな山古志地区も、景観を取り戻しています。
メタバースが地域活性化にどれほどの影響をもたらしているかは定かではありませんが、メタバースを通して旧山古志村に興味を持ち、足を運ぶ人が生まれたという点においては、地域活性化に貢献しているといえるでしょう。今後も地方や地域が抱える問題の解決に、メタバースが活用されることを期待したいですね。