メタバース事業への大規模投資や、新コンテンツの登場など、国内はもちろん世界でもメタバースの発展が著しいように感じられる昨今。しかし一方で、メタバースに関わる部門を廃止する企業もあるようです。
その1つが、3月に大規模レイオフを実施したディズニー。ディズニーではいま何が起こっているのかを、解説します。
大規模レイオフを行ったディズニー
ディズニーは2023年2月に、マクロ経済状況悪化やストリーミング領域における競争激化などを理由に、7,000人規模のレイオフを発表。レイオフとは、従業員を一時的に解雇するということで、業績悪化が見られる企業で行われる雇用調整の1つです。
人件費削減のためのレイオフは、あくまでも「業績が回復するまでの一時的な解雇」であり、業績が回復すれば再雇用することが前提。業績悪化で正式に解雇される「リストラ」とは異なります。ちなみに2023年3月現在、ディズニーからはレイオフに関する公式な見解は明らかにされていません。
メタバース参入は前向きだったが…
他企業と同様に、ディズニーもメタバース参入には前向きな姿勢を見せていました。2021年11月の収支報告発表の際には、前CEOが「現在までのディズニーの取り組みは、我々が現実世界とデジタルワールドを結びつけ、自社のメタバースで境界のないストーリーを提供できるようになるまでのプロローグに過ぎない」と発言するほど。
その後、2022年9月には、上海ディズニーリゾートに「VR SuperSpace」というVR体験センターが登場するといった動きもありました。しかし、前述の大規模レイオフにより、ディズニーのメタバース戦略は「白紙に戻った」といわれています。
メタバース関連部門も廃止へ
レイオフにより廃止された部門の1つに、メタバースに関連する「次世代ストーリーテリングと消費者体験部門」があります。この部門はおよそ50人の従業員で構成されており、ディズニーが持つ知的財産を、どうバーチャル空間に活用できるか、模索していたといわれています。
しかしアメリカでは、同部門幹部のMike White氏のみが残り、ほか全員がレイオフされたととのこと。ディズニーのメタバース進出に大きく関わる部門の事実上の廃止は、アメリカメディアThe Wall Street Journalを中心に、大々的に報じられました。
メタバース戦略白紙へ!ディズニーはどうなる?
メタバースの発展に向けて前進する企業が多く存在するなか、ディズニーのような世界的大企業がメタバース領域への進出を白紙に戻すという動きも見られます。ディズニーは今後、どういった戦略で厳しいアニメーションの世界を乗り切っていくのでしょうか。
ディズニーに限らず、メタバース分野への投資額の減少など、「メタバースがピークを超えた」と思われるような動きは、各所で見られます。進歩・活用が著しいメタバースですが、一般的に利用され、メタバースが「当たり前」となる世の中は、まだまだ遠いようです。