世界遺産としても知られる石見銀山に、Instagramを用いたARフィルターが設置されました。新技術を活用した試みは、若年層への認知度向上、石見銀山への来訪を促す効果を見込んでいます。
今回は、新たに設置されたARフィルターについて、また以前から石見銀山で導入されているAR体験についてご紹介します。
世界遺産・石見銀山とは
石見銀山は、島根県太田市にある日本最大の銀山です。現在は閉山していますが、最盛期の戦国時代後期から江戸時代前期にかけては、世界の銀の約3分の1を産出した日本のなかでも、大部分を占めていたといわれています。
別名・大森銀山、佐摩銀山とも呼ばれた石見銀山は、明治期以降に銀が枯渇。代わりに銅などが採鉱されました。しかし、銅の価格暴落、坑内の環境悪化などが原因で、大正12年に一時休山。昭和16年に銅の再産出を試みますが、昭和18年の水害により完全に閉山しました。
長い歴史を持つ石見銀山には、歴史的な建造物や遺構が多く残されています。これらは市や県、国により文化財として保護されてきました。2001年、政府は「東西文明交流に影響を与え、自然と調和した文化的景観を形作っている、世界に類を見ない鉱山」として、世界遺産登録を目指し、その後2007年6月に世界遺産登録が決定。アジア初の産業遺産としての登録は、当時世界で大きな話題となりました。
ARフィルターで集客を見込む
「最盛期に石見銀山が世界経済に与えた影響」「銀生産の考古学的な根拠が良好な状態で保存されている」「銀山と鉱山集落から輸送路、港に至る鉱山活動の総体を留めている」という、3つの価値を評価され、世界遺産に登録された石見銀山。そんな石見銀山で、Instagramを活用したAR体験が楽しめます。
ユーザーはInstagram内の石見銀山オリジナルフィルターを通じ、写真や動画撮影が可能。3種類のARフィルターは、石見銀山ならではの魅力的な体験を提供してくれます。石見銀山の展示室に設置されたQRコードを読み込むと利用できます。石見銀山内でのおすすめの撮影スポットもありますが、フィルター検索で、自宅などでも利用可能です。
展示室のタブレットでもAR体験が可能!
今回の試みの以前から、石見銀山は展示室にあるタブレットで、ARアプリ「石見銀山AR 大久保間歩」の体験を提供してきました。アプリを起動し壁面模型を映すと、奥から明治の鉱山作業員がトロッコを押してくる様子を見ることができるものです。
石見銀山は、世界遺産登録後に集客面での課題を抱えていました。世界遺産として歴史的・文化的な形を残しつつも、現代に合ったアプローチでの学びや集客の実現は、石見銀山はもちろん、島根県全体のPRにも貢献します。さまざまなAR技術の導入で、より多くの方が興味を持ち、足を運ぶことに期待したいですね。
ARで新たな歴史の楽しみ方を
今回、InstagramのARフィルターを提供したのは、株式会社ProVisionです。同社は過去にも群馬県の富岡製糸場、神奈川県の大船観音寺などの世界遺産に、ARコンテンツを提供しています。
歴史に残る素晴らしい場所や建造物は、AR技術との融合により、さらに魅力あふれる学びや感動を提供してくれる場になることでしょうか。