広大な土地、多くの人口を誇る中国の北西部に位置するウイグル自治区。ここでは「再教育」を謳った収容所での過酷な現状がありましたが、この事実を知る人は多くはないかもしれません。
そんな問題をドキュメンタリーにまとめたVRが存在します。今回は、中国ウイグル自治区の収容所を舞台にしたVR映像に関する情報をまとめました。
ウイグル自治区とは
ウイグル自治区は中国最大の自治区で、世界で8番目に大きな国家行政区画です。ウイグル族、漢族が8割以上を占めており、このほかにも複数の民族が存在します。
長い歴史のなか、漢や唐の時代には中国の直接支配下に置かれたこともあります。近いところでは2014年に起こったウルムチ駅爆発事件により、中国政府が再教育収容所などで徹底的な管理統制を実施。「身も心も中国人に生まれ変わる」ように促す「中国化」を人々に強要し、厳しい拷問などを受ける人も多くいました。
本当にあった「再教育」収容所を舞台にしたVR
再教育収容所は前述の通り遠い昔の話ではありません。2014年の設置から収容者数は年々増加し、2018年には少なくとも100万人が収容されていました。現在、自治区当局は「収容者はすでに全員卒業した」と主張していますが、新たな収容所建設の可能性があるなど、その事実は明らかになっていません。
再教育収容所は劣悪な環境で、狭い部屋にトイレが1つ、数台の二段ベッドしかないなかに十数人の収容者が生活します。再教育を目的とした授業は教壇と机のあいだを鉄格子で区切った空間で行われ、施設内では中国語しか話すことができません。
ルールを守れら無ければ拷問を受ける。そんな状況を、実際に収容された方の10時間にも及ぶ証言からVRアニメーション化したドキュメンタリーは、気分が悪くなるような内容も含まれています。
衝撃的な内容ですので閲覧には注意が必要ですが、ある程度年齢の大きくなったお子さまと世界のさまざまな問題について一緒に考えるきっかけになるのではないでしょうか。なお、この動画はOculus TV やYouTube VRで視聴可能です。
VRで事実を伝える意味とは
再教育収容所は立ち入り禁止のため、実際にそのなかでどのようなことが起こっていたのかを知るのは、収容された方々のみです。収容所でひどい拷問を受け、命を落とした方も少なくはありません。
3名の元収容者の証言、そして衛星映像や地方政府の記録、報告書などに基づき慎重に制作された動画ですが、情報の信憑性に乏しいということで中国政府はこうした事実を否定しています。
私たちの知らない場所で、どういったことが起こっていたのか、ドキュメンタリー内での話が全て本当なのか、受け止め方は見た人によって異なるでしょう。とはいえ、話を聞くだけ、2Dの再現映像を作るだけではなくVRでの映像にすることで、より直接的なインパクトとそれによる共感を生むことが可能です。
20分の動画で何を得られるのか、それぞれの共感性や思考が問われます。
忘れられてはいけない歴史をリアルに残す時代へ
メタバースニュースでは注目したいさまざまなVR動画を取り上げています。今回ご紹介したウイグル自治区に関するドキュメンタリーはもちろん、以前ご紹介した絶滅寸前の言語、イラク紛争が残した恐怖などは、日常的にあまり注目されない話題だといえるのではないでしょうか。
深刻な問題にも関わらず事実が伝わらない、広まらないということは多くありますが、VR映像はこうした問題をリアルに、そしてより多くの人に知ってもらうことに貢献するといえます。
今後も忘れられてはいけない歴史を残すVRの登場に、期待したいですね。
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