メタバースニュースではVRドキュメンタリー、VR映画などを多くご紹介していますが、2020年に制作されたMR映像が話題となっています。VR、ARではないMR映像にはどういった魅力があるのでしょうか。
今回は、MRで新たな映像表現に挑戦した映画作品をご紹介します。
そもそもMRとは
作品をご紹介する前に、MRとはどういったものを指すのか、AR・VRとの違いなどとともに再度確認しましょう。VRは仮想空間のなかに入り込み、現実世界のような体験や行動を可能にします。人気ゲーム「どうぶつの森」を連想すると、わかりやすいのではないでしょうか。
一方ARは現実空間の拡張、現実空間に架空のキャラクターなどを映し出すものです。スマホゲーム「ポケモンGO」では、部屋のなかや屋外の景色の中などにキャラクターを呼び出し、エサをあげたり写真を撮ったりできますが、こういったものがARだといえます。
VRが仮想現実、ARが拡張現実だとすると、MRは一言でいうと複合現実です。現実世界を仮想世界に反映し、仮想のものに近づいたり直接的な操作ができます。VRよりも現実に近く、ARよりも仮想のものをリアルに体感できる、ARとVRのよいとこどりをしたのがMRだといえるでしょう。
MRを活用した作品「Fragments」
そんなMRを活用した「Fragments」は、2020年にフランスとイギリスによって制作されたおよそ15分の動画です。ボリュメトリックという技術を使って撮影をし、MRデバイスで新たな映像表現に挑戦した内容になっています。
「Fragments」は最愛の夫をなくした女性の音声インタビューをもとに作られたドキュメンタリーです。夫の死を受け入れられない女性が、思い出の断片をたどっていく様子が描かれています。
突然大切な人が亡くなってしまったとき、喪失感や悲しみをどう乗り越え一歩を踏み出すのか、そのために思い出をどんな形で残すのかなどを考えさせられる作品です。
作品の魅力
作品の大きな2つの魅力は、映像と音声でしょう。ボリュメトリックとは、現実のものや場所を三次元のデジタルデータに変換し、高画質に再現する技術です。デジタル空間上で自由に演出や配置ができる次世代の撮影方法として、近年注目を浴びています。
「Fragments」ではこの技術を駆使し、現実空間に夫と女性との記憶の断片を映し出します。この映像をさまざまな角度で見たり、映像に近づいたりすることができ、見る人によって感じ方や伝わるものが異なるのが魅力です。
また、音声は夫を亡くした女性自身の声を使用しており、声から伝わる女性の表情や感情がよりリアルに伝わります。映像と音声のギャップも、リアリティを高める要素の1つとなっており、より感動的なドキュメンタリーにするためのスパイスになっているといえるでしょう。
現実世界をベースに、より2人のストーリーに没入できるのがMRの特徴です。夫が生きていた頃の日常が徐々に壊れていく様子を、MRならVR以上に印象的かつ衝撃的に体感できるのではないでしょうか。
新たな形のドキュメンタリーの登場に期待!
複合現実は現実世界より多くの感情を呼び起こし、VRの世界よりも現実に近い体験を実現してくれることが期待されます。VRドキュメンタリーは多く存在しますが、今後はMR技術を駆使した映像も多く登場することが予想されます。
よりよい映像の登場で、私たちはさらに多くの体験や学びが可能となります。誰かの体験を自身の体験として感じられるMRやVRの世界を、ぜひ堪能してください。